今日の会議での一言。
「旅人にも優しい街にしたい!」
僕は学生時代にバックパッカーとして、また就職してからは出張で、
いろんな国を旅しました。
国によって、地域によって、生活習慣も文化も食べ物も、あらゆるものが異なり、
時には危険な目にあったり、飛んでもない病気をもらったりもしていたのですが、
「あー、この国(この街)は居心地がいいなぁ」、と感じる場所が、
世界のどの地域に行ってもありました。
その居心地の良さ、過ごしやすさって、今思い返すとそこに暮らしている人々の作りだす「空気感」によるものが大きかったように思います。
その空気感は、人々の優しさや、思いやり、価値観などから創られており、
そしてそれは旅人である僕にも、惜しげもなく注がれました。
結果、僕はその国や、その街のことがいまでも印象に残っており、
いまでも好きです。
… … … … … … …
21歳の頃、中東はシリアという国を旅した時のこと。
ある日、定宿としていた首都ダマスカスのゲストハウスから、早朝の長距離バスに乗り、僕は砂漠の中にある「パルミラ」という有名な世界遺産遺跡を歩いて見てまわっていました。
あまりに熱中していたのか、気がついたら辺りは日の沈みかけた、宵の口。
付近に安宿もなく、バスの運行もすでに終わっており、途方に暮れてトボトボと200Km以上離れたダマスカスへとのびる道を歩いていると、一台の大型トレーラーが止まり、中から白髭のおじさんが「乗れよ!」というジェスチャー。
それまでヒッチハイクなどしたことのない僕でしたが、他になすすべもなく、
アラビア語しか話せないシリア人のおじさんにすべてを託して助手席に…。
結局そのおじさんは自身が向かう方向とは逆の方向であったにも関わらず、
トレーラーをUターンさせ、朝まで運転して僕を無事ダマスカスまで送りとどけてくれたのでした。
さすがに何かお礼をしなきゃと思い、ジェスチャーで幾らか払わせてよ、と伝える僕におじさんがアラビア語で何か言っています。
まったくアラビア語のわからない僕は、近くにいた英語を話せる警察官に、
彼が何を言っているのか聞いたところ、そのおじさんの言葉は、
「お金はいらないよ。それよりシリアを楽しんでくれ!」
見ず知らずの、しかも国籍も風貌もまったく違う僕に、こんなに親切にしてくれるっていうのは、いったいどういうことなのか…・。
嬉しいやら、申し訳ないやら、驚くやらでもう完全に感情がキャパオーバーでした。
・・・
そのときの言葉、「シリアを楽んで」。
今でも強く心に残る言葉であり、僕がその国を好きになった理由でもある言葉。
僕もいつか心の底から、自然にそして誇りをもって、
「広島を楽しんで」
と、この街を訪れる旅人に伝えたい。
そう思います。
今日の一言は、そんな記憶を蘇らせ、また想いを強くさせてくれました。
(ひろしまジン大学 平尾順平)